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SCAR WARS -ケロイドとの戦い-

Episode.04 さまざまなケロイド治療法【物理療法】1)圧迫療法

ケロイドは、見た目が皮膚の一部が変形して盛り上がった感じですから、単純な発想で、これを押さえつければ良くなるのでは、と誰でも考えるのではないでしょうか。実際に、ケロイドは圧迫することにより、比較的薄くなり目立たなくなります。ケロイド治療法の中では、これが最も確実で安全ではないでしょうか。

-圧迫療法の実際と問題点-

では、具体的にどうすればいいのか。実は、ケロイドの圧迫療法は、それほど簡単ではありません。以下に問題点を挙げます。

1.圧迫材料に何を使用するか

圧迫材料は硬くないと圧迫が不十分になりますが、硬質ゴムのように硬すぎてはケロイドを傷つけます。一方、スポンジのように柔らかすぎると圧迫力不足で効果が得られません。圧迫材料としては、これが一番というものがなく、ケロイドの硬さや、できた部位によって選ばなくてはなりません。シリコーンジェルシートが製品として利用できるようですが、かなり高価なものですし、それ自身が圧迫効果を持つと謳っていますが、私自身はこれを検証したことがありませんし、作用機序は未解明なのでコメントできません。
私自身で腹部の長さ10cm以上の肥厚性瘢痕に圧迫療法を行ったときは、硬質スポンジに包帯を巻き付けて使いました。

2.圧迫材料でケロイド全体を均一に圧迫できない

圧迫材料が当たる部位によって圧迫力が違うと、ケロイドが薄くなっても、結果的にはでこぼこになってしまいます。
私自身は、圧迫療法で肥厚性瘢痕が少しでこぼこになりました。もっとも、後日これを自分で開発したケロイド治療剤でほぼ平らにしました。

3.ケロイドができた場所によっては圧迫できない

例えば頬にケロイドができた場合、これを適当な力で圧迫するには、頬の上から硬質スポンジのような圧迫材料をあて、その上から伸縮包帯などで、頭や顎を含めてぐるぐる巻きにしなければなりません。しかし、看護師のようなプロでも、このような部位にうまく包帯を巻くのは難しく、ましてや素人が、圧迫材料に均一に力がかかるように、しかも、ずれないように包帯を巻くのは不可能です。ですから、頬に限らず、部位によって圧迫療法が使えないケロイドがあります。
私の場合は、腹部の肥厚性瘢痕の圧迫に、女性用ガードルを腹巻きのようにして使いました。伸縮包帯は巻くのに時間がかかり、実用的ではありませんが、ワンタッチで圧迫できる製品というのもないため、ケロイドができた部位にあわせて、包帯の代わりになるものを工夫するしかありません。

4.蒸れる

圧迫材料はケロイドより大きくなくてはなりませんから、周囲の正常皮膚に密着します。また、圧迫材料を押さえるための伸縮包帯なども皮膚に密着します。日本は湿度の高い国なので、夏はこれらが皮膚の蒸れる原因になります。
私が使用した女性用ガードルの腹巻きも、夏場の蒸れは我慢しがたいものでした。ただでさえ、ケロイドは特有の痒みがあるのに、圧迫療法で皮膚が蒸れると、その痒さが強まり不快です。

-圧迫療法の改善-

・Pressure Garment

効果が確実で安全だと言いながら、圧迫療法にこれだけ問題があるのは困ったものです。何か簡単に圧迫療法が続けられる技術や製品がないものかと調査したところ、欧米では圧迫衣服Pressure Garmentなるものが使われていることを知りました。そのなかで、米国Jobst社の製品を取り寄せました。いろんな部位のケロイドに対応できるよう、きめ細かく製品を揃えており、胸のケロイドにはチョッキ型が、腕のケロイドには長袖シャツ型が、頬など顔面のケロイドには覆面型がありました。
ところが、例えば長袖シャツ型では、西洋人向けなので腕がやたら長く、東洋人の体型には合いそうにありませんでした。また、材質は伸縮性がある布を使用しているものの、肌触りはあまり快適ではなく、しかも非常に蒸れるので、日本ではとうてい使用できないと判断しました。

・国産プレッシャー・ガーメント

傷痕 プレッシャー・ガーメント

Pressure Garmentという、簡単に圧迫療法が実行できそうなアイテムに出会ったものの、このままでは日本のケロイド治療には使えません。しかし、鐘紡にはすばらしい繊維素材が多数ありますから、それらを活用すれば、日本人のためのプレッシャー・ガーメントができるはずです。
繊維部門の多くの方の協力を得て、簡単に着用でき、蒸れず、効果が確実で安全性の高いプレッシャー・ガーメントの試作品ができました。2週間つけっぱなしでもかぶれず、そのまま入浴してもすぐに乾いてしまう、すばらしいプロトタイプができました。ただ、詳しい事情は書けませんが、残念ながら私の力至らず、事業化はできませんでした。
Jobst製品は現在、静脈瘤等の治療やむくみ改善用に日本でも販売されていますが、圧迫療法は、ケロイドの治療だけでなく予防にも有効なので、日本人のためのケロイド治療・予防用プレッシャー・ガーメントの発売が期待されます。

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